ネオンがきらめく、夜の町を歩く。


いま手にしているお金がキレイなものでないことは分かっている。


けれど私は、そうでもしないと生きることさえできなかった。


事件のあと、私は過去の全てを否定するかのように記憶を失い、この町にやってきた。


犯罪が多発し、日本でも危険地区とされているこの町は、たしかに危ない場所ではあったが、手段を選ばずに生きるには、都合がよかった。


今は廃墟となったラブホテルを占領し、ひとりで暮らしている。


あの日の記憶を取り戻したとはいえ、いまでも大半の記憶は思い出せない。


それに私の記憶と現実には、奇妙な不一致もあった。


……私の家族は、
まだ生きているかもしれない。


わずかな光でも、希望はまだあった。