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代々神につかえる夜月の一族には、人の願いを叶える不思議な力があった。


その中でも朱実は、類をみないほどの天才だった。


「内臓が……生き物のように体に戻っていく」


交通事故で辛うじて生きているような子供も、朱実が手をかざすだけで、無傷に戻した。


凪瀬町の人々は、そんな朱実を神様のように崇める反面、恐れる人も多かった。


それに朱実は積極的に人々の願いを叶えることもなかった。


独善的に願いを叶えることは、必ずどこかで歪みが生じ、争いを生むことを知っていたからだ。


唯一、彼女が願いを叶えるのは、弱い者の命がかかっているときだけだった。


そんなある日。朱実が15歳のころ。 凪瀬町で大きな地震が起き、町が津波に襲われた。