10年前に大火事で患者や医師など、50人あまりが亡くなり、封鎖された大病院が、凪瀬町にある。


音音が向かったのは、その大病院の最新部にある遺体安置室だった。


異臭を放つその場所で、私は異様な光景を目にする。


天井から無数にぶら下がる、シルクのように真っ白な糸。


その糸に、まるでクモの巣にひっかかった獲物のように、裸の女の子がからまっている。


「ここが屠殺場なの? だとしたら、この女の子たちは?」


物陰に隠れ、音音の様子をうかがう私。その目の前で、音音は服を脱ぐと、ナイフを取り出す。


グチャグチャ…!!


音音はナイフで、顔からお腹のあたりまで一気に引き裂いた。


血しぶきが上がると、引き裂かれた肌の内側から、まるで着ぐるみを着脱するように、音音とは似ても似つかない、黒髪の少女が現れた。


「く、喰喰…」