部屋を見渡す。最悪、もう食べられてしまったのかも…。


そう思った直後、震えながらテーブルの下に隠れる和哉の姿が目に映る。


……いたっ! 生きていてくれた!


少しだけ希望が見えた気がした。それと同時に、再び恐怖が襲う。


早く逃げなきゃ、殺される。


幸いなことに、女は和哉からは背中を向けている。それに食べるのに夢中で、和哉の存在にはまったく気づいていないように思えた。


「和哉…早く逃げて。お姉ちゃんのところまで走って…」


私は手話で和哉に伝えた。


……実は和哉は耳に障害があって、ほとんど音を聞くことができなかった。


和哉は小さくうなずく。


そして意を決して、一気に飛び出す。