次の日、揚羽は…
手料理を振る舞う約束のため、鷹巨が迎えに来てくれる偽装住居に向かっていた。

そこは、以前送ってもらったマンションで…
タクシーで移動の最中、倫太郎からメッセージが入る。


〈今そっち言った〉

言った?
どうやら予測変換の選択ミスのようで、すぐに〈行った〉と訂正が入る。

それは鷹巨がこっちに向かった事を知らせるもので…
作戦に不備をきたさないよう、倫太郎はすでに鷹巨のマンション付近で張り込んでいたのだ。


それはともかく、倫太郎がそんなミスをするのは珍しく。
揚羽は、昨日打ち合わせした時の…
どこか上の空で、ずっとソファで丸くなっていた倫太郎を思い返す。

もしかして具合が悪いんじゃ?


「ねぇ、どっか悪いの?」
すぐに電話をかけると。

『は?
どこも悪くねぇし』

そう答えた倫太郎は、注意しなければ気付かないレベルではあったものの、息が荒かった。


『…切るぞ』

「いや悪いでしょ」

『いや意味わかんねぇし』

「どこが悪いの?」

『だからっ…性格?』

「ふざけないで!」

『ふざけてんのはそっちだろっ』

と押し問答の末。