そう、楽しいから笑うのではなく笑うから楽しいのだ、という名言通り。
形から入ると自然とそうなるもので…
演技で楽しんでいた揚羽も、いつしか自然とそうなっていた。

でもそれだけじゃなく。
鷹巨の人柄も遊園地という場所も、揚羽を純粋に楽しくさせていた。

なのにそれが、一連の出来事が、全てシナリオだとしたら…
ヒヤリとする揚羽。


だけど詐欺目的にしては、やはり表の顔を晒しているのが腑に落ちなくて…
さらに忙しい身を考えると、もっとダイレクト攻めるのが自然だった。

にもかかわらず、間抜けなくらいで…
ふと思う。
青ざめてる程度の男性を気遣えるような人間が、人の命に関わるお金を騙し取れるだろうかと。


だけどそんな考えになるのは、すでにこの男に絆されてるような気がして…
まるで、ゆっくりと毒に侵されてるような気がして…

なんだか怖くなった揚羽は、これ以上毒が回る前に決着をつけなきゃと、強行手段に乗り出した。


「あの、今日のお礼に手料理を振る舞いたいんですけど…
食べてもらえませんか?」

「いんですかっ?
いやお礼なんて全然いらないんですけど、手料理はめちゃくちゃ嬉しいです!」

「よかったです。
あ、何が食べたいですかっ?」