するとふいに、鷹巨から優しく頭を撫でられる。

「…え、何ですか?」

「すみません。
なんだか一瞬、泣きそうな顔に見えて…」

相手の特徴を捉えるのが得意というだけあって、人の表情を逃さない男だ…
揚羽はきゅっと胸を掴まれながらも、油断ならないと気を引き締める。


「鷹巨さん、さっきから謝ってばっかりですね?
私なら大丈夫ですよ」

そうきっと、人は絶望を味わうと強くなるのだろう…




「今日はとっても楽しかったですっ。
ありがとうございました」

「いえ、元気な顔が見れて良かったです。
僕の方こそ、付き合ってくれてありがとうございます」

そのために!?
揚羽は大きくした目を向けた。


「もしかして、私を元気付けるために誘ってくださったんですか?」

「いやまぁ、僕が聡子さんの笑顔を見たかっただけなんで…
でもなんか、別の意味で笑いを取った気もするんですけど」
情けなさそうに笑う鷹巨。


これが詐欺なら大したもんだ。

思わず心を掴まれそうになった揚羽は、そうハッとする。