「だから、オマエが元気になるなら何でもする」

「…なんでも?」

「ん。
俺に出来る事なら、どんな事でも」

「……じゃあ、…キスしてよ」

途端、耳を疑って目を見開く倫太郎。


例のごとく上書き目的と。
今なら拒否されないんじゃないかと期待した望だったが。

了承せずに、ためらう倫太郎を前に…


「…冗談よ」
胸を切り裂かれながら、顔を背けた。

次の瞬間。

グイと向き戻されて、望の唇に倫太郎のそれが触れる。

刹那、心臓が爆発したかのようになり。
今度は望が目を見開いた。


そのキスは、ぶっきらぼうな倫太郎がしてるとは思えないほど優しくて。

チュっと甘い音を立てて、何度も吸い付くように絡んでは…
思わずといった様子で()んで、愛しくてたまらなそうに()んで…


望の身体は、ぶわりと激しい波に飲まれて。
胸はありえない力で締め付けられて。

堪らず、その唇から逃れてしまう。


「ごめんっ…
倫太郎とは、今までそういう関係じゃなかったから…
なんか、耐えられなくて」

「っ…
じゃあもうしねぇよっ」

「そうじゃなくて!」
立ち去ろうとした倫太郎の腕を、すかさずぎゅっと引き止める。