「…ありがとう。
でも今は食欲ないから、後で食べるわ…」

だけど後になっても、少ししか口に入らず。


それからも望は、あまり食べれず…
繭に閉じこもるように塞ぎ込んでいった。

そう、生きるのにうんざりしていた望は、当然食べる気など起きるはずもなく。
足手まといになっているという状況からも、消えてしまいたいと思っていたのだ。


なのに。

「望っ。
目玉焼き焼いたんだけど、食うか?
見た目は悪いけど、たぶん食えるから」
手作りなら食べてくれるんじゃないかと試みたり。

毎日あの手この手で甲斐甲斐しく世話を焼く倫太郎に…
望は少しずつ絆されていく。


仕方なく、焦げて黄身も崩れてるそれを口に運ぶと…
その温かさに、思わず涙が零れる。

「そんな不味かったかっ?
つか泣く事ねぇだろ…」

そうじゃないと、望は首を横に振る。


「ねぇっ、なんでそんなに優しくするの?」

「はっ?
なんでって…
…オマエの事が、すげぇ大事だからだよ」
愛しげな目でそう見つめられて…

いっそう涙が溢れ出す。


好きでも愛してるでもないその言葉が、逆に深く沁み込んで…
痛いくらい、望の胸を締め付けていた。