それに触発されて、失神前の不透明だった記憶が甦る。

ー「約束通り、今度こそ恨みっこなしだから」ー


そういう、事か…
つまり勝負は続いていて、落ちた望が負けたのだ。

それで携帯やPCまでもが、約束通り全部奪われたのかと腑に落ちる。


だからってそこまでする必要がある?
ここまで追い詰める必要があるっ?

その場にぼろぼろと泣き崩れた。


かろうじて住居や生活必需品等は残ったものの…
財布に残っているお金しかないため、一時しのぎにしかすぎず。

夜の仕事で前借(バンス)してもらおうにも…
揚羽の携帯や通帳等も奪われていたため、その仕事も捨てざるを得なかった。

そこまで約束を順守するのは、せめてものプライドだったが…
ここまで完膚なきまでに負ければ、抗う気も起きなかったのだ。

そう、詐欺データを奪われた以上。
下手に違約すれば、さらに自分の首を絞めかねない。
なにより、バディだった倫太郎まで犠牲にしかねないと。


だけど、これからどうすれば…

途方に暮れながらも…
泣き暴れた反動と、強力な睡眠薬の後遺症で、ウトウト眠気に襲われる。


ねぇ仁希…
全部奪うんなら、どうしてこの命も奪ってくれなかったの?

そんな思いの中、望は意識を手放した。