「ほらもう泣かない。
こんなに望の涙をもらえただけで、俺はもう充分だから。

それでも気にするんなら…
せめてこの行き場のないネックレス、もらってくんない?」
優しく覗き込む仁希に。

泣きながら、コクンコクンと頷いた望は…
ふと、それを逆手に取ろうと思い立つ。


「…じゃあ、付けてくれる?」
そう気持ちを整えると…

首に付けられたそれを、ぎゅっとして。

‪「悪いけど。
これを受け取ったからには、嫌でも一緒に逃げるから」‬
そう覚悟の目で訴えた。


すると仁希は、吹き出すようにしてそれから逃れて。

「聞き分け悪いよ、望。
話聞いてた?」
と、呆れた素ぶりを見せる。


「仁希こそ。
いいかげん、1人でカッコつけるのやめたら?」

「じゃあ一緒に死のうって言って欲しい!?
捕まる可能性の方が高いのにっ」

「助かる方法はあるはずよ!?
お金でなんとかならないのっ?」

「ならないよ。
俺は組織の情報を知りすぎてる。
それに義理とはいえ親父を、しかも2度も裏切るとなると…
相応の処分は避けられない」

「警察はっ?
この際自首して、警察に匿ってもらえばいいじゃないっ」

そうなれば実刑は免れないが、命には変えられないと思ったのだ。