「だからこいつを抱えてる限り、一緒に逃げるつもりはない」
そう腎臓を指差した仕草に…

刺された場所が重なって、即座に望は青ざめる。


「ねぇ、もしかして…
腎臓が悪くなったのは、あの時そこを刺されたから?」

一瞬ためらった仁希だったが…
すぐにその出来事を笑い飛ばす。

「そっ。
さすがだよな〜。
事後処理を怠って腎不全にすれば、もう逃げれないからね」

その事実に、望の胸は激しく抉られる。



「ごめっ、なさ…
私の、せっで……」
涙が溢れて、言葉にならずに謝ると。

「だから望のせいじゃないって。
強いて言うなら親のせいだし。
あとは、組織を侮ってた自分のせいだから」
そう言って、望の頭をよしよしと撫でた。


とはいえ、望のために危険を冒したのは紛れもなくて。

そのせいで逃げ道を失っていた事に…
もうじき12年にも及ぶ不自由な生活や、それが一生続く事に…
だからどんなに狂いそうな思いをしても、放棄するしかなかった事に…

それなのに、優しく慰めてくれる事に…

望は心臓を鷲掴まれて、息も出来ないくらい潰される。