虹色アゲハ

そして。

「虹は希望の象徴なんだろ?
そんで俺らの名前がくっつくと、希望になるから。
ずっと一緒にいられるようにって…

あの日、渡すつもりだったんだ」
そう見つめられて。

望はまたもや涙に襲われる。

そんな話、覚えててくれたんだ…


「ずっと捨てれなくてさ…

ホームに着いたら、すぐに冷え切った身体を抱きしめて…
2人で笑い合うはずだったのにって。
あの電車に乗れば、ずっと一緒にいられるはずだったのにって。
何度も、何度も、狂いそうなほど思ってきた」

そうなり得た過去と、その時の仁希の気持ちを想って…
涙が次から次へと溢れ出す。


「今だって…
望の隣にいるのは、俺だったはずなのにって。
その心も身体も、俺だけのものだったはずなのにって!」

ネックレスをぎゅううと握り、悔しそうに声を震わす仁希を…
望はたまらず抱きしめた。


「じゃあ今度こそ、一緒に逃げようっ?」

だけど仁希は首を横に振って、そっと望を引き離した。


「望にはもう、他に愛してる奴がいるだろ?
自覚はしてないだろうけど」

「だからっ、結婚相手の事ならもういいの。
今こうしてる時点で、とっくに仁希を選んでるっ」

「だから気付いてないだけでっ…
間違ってるよ」