虹色アゲハ

「まさかっ。
気づかないわけないって言ったじゃん。
ただ、望の事は何でも知りたかったからさ…
なんでその源氏名にしたのか聞きたくて」

「それは…」

真実を知った今となっては…
絶望から這い上がる思いで、という理由や。
仁希のせいで望の社会的存在が死んだから、という話は言いにくく。


「ホステスを夜の蝶っていうじゃない?
だからそれに(ちな)んで。
あと蝶は死と再生の象徴(・・・・・・・)らしいから、生まれ変わったつもりで頑張ろうって」
そうまとめると。

「生まれ変わったつもりで、か…
俺も生まれ変わりたいな。
今度こそ普通の人生に…」
悲しげに呟く仁希。


「出来るわよ。
逃げ切って、ちゃんと1から頑張れば」

「はは、出来ないよ。
一般人はいいよな。
どんな問題があっても、自分の覚悟次第でどうにでもなる。
逃げないだけで、逃げれないと思い込んでるだけで…
体裁や罪悪感、恐怖や責任感なんかに縛られてるだけだったり。
本気で逃げようとすれば、社会が守ってくれたり。
たとえ生き地獄でも、一時期の我慢だったり」

「…そんな簡単な事じゃないわ。
一般人でも、苦しくてどうにもならない人もいる」