虹色アゲハ

「こんな環境で育ったからかな…
たぶん俺、なんか欠落してんだと思う。
正直さ、望以外どうでもいんだ。
望のためならなんだって出来るし。
それで誰が死のうが苦しもうが、なんとも思わない。
言ったろ?望が全てだって」

そこまでの想いに驚くも…
胸がどうしょうもなく掴まれる。


「けどその望の気持ちですら、たぶん半分もわかってあげれないんだと思う。
だから再会した時もさ…
俺なんかと会いたくなかっただろうなとか、俺の事恨んでるだろうなとか思いながらも。
俺自身は望と視線が繋がっただけで、どうにかなりそうなくらい嬉しくなったり、めちゃくちゃドキドキしてたり…
散々苦しめといて、勝手だろ?」

仁希のせいじゃないと、望は首を横に振る。

そして、その時は何の機微も感じ取れなかったのにと。
自分の洞察力に落胆しつつも…

ふと思い出す。


「ねぇ、その時(さいしょ)から気づいてたって言ってたけど…
だったらなんで、揚羽が源氏名か聞いてきたの?
ほんとに私かどうかは、自信なかったわけ?」