そうして望は…
仁希を拾って、自分の家にかくまうと。


「お腹空いてるでしょ?
とりあえず何か作るから、苦手なものがあるなら言って?」

タクシーの中で、一日中逃げ回っていたと聞き、そういたわる。


「えっ、作ってくれんだ?
だったらリクエストしてい?」

「まぁ、材料があればね」

「じゃあ、薄味の生姜焼きはっ?」

「生姜焼きっ?
男って好きなのね。
でもごめん、それは個人的な理由で作りたくなくて…
他には?」

「…ふぅん、じゃあ何でもいいよ。
薄味で水分少なめのものなら」

やたらと落ち込む仁希に、気が引けながらも…
細かいリクエスト内容が気になる望。


「どこか、悪いの?」

「あぁ俺、透析患者なんだ。
ほら今、逃亡中で受けれないからさっ。
せめて食事は、いつも以上に気を付けとこうかなって」

「そうなんだ…
でもそれ、早く受けなきゃヤバいんじゃない?」

「うん、でも…
後で話すけど、当てはあるから大丈夫だよ」
安心させるように、目でもそれを訴える。


「ならいいけど…
話はじっくり聞かせてもらうから。
あの日の事も、この数ヶ月の事も」

そう、合流してからその事が聞きたくてたまらなかったのだ。