ー「私は、詐欺師なのよっ?」
「うん、でもその前に1人の人間だよ?」ー
優しく慰めてくれた日や…

ー「詐欺師を辞めて、俺の奥さんに転職しない?」ー
プロポーズに驚いて、嬉しくてたまらなかった日。

ー「会いたかった」ー
何度もそう抱きしめてくれた事。

そんな鷹巨との日々が思い出され…
ぼろぼろと泣き崩れる望。


ー「愛してるよ、聡子。
すごく、すごく…
無事にやめれたら、結婚指輪買いに行こう?」ー

約束、守れなくてごめんなさいっ…


ー「俺の事、ちょっとくらいは好き?」ー

「うぅっ……」

今頃になって、ちゃんと鷹巨を好きだったと気づいて…
いっそう涙に襲われる。



だけど、それでも仁希を選ぶほど…
その存在は絶大だったのだ。

かつては自分の全てだった存在で。
その裏切りで、今までの自分は成り立っていて。
つまり望の基盤は仁希で形成されていて…

もはや一心同体とでもいうべき存在に、惹き寄せられずにはいられなかったのだ。