だけどその気持ちに応えるためにも、幸せにならなきゃと…
決心がつく。


「…ありがとう。
だから私、もう足を洗うわね」

それはつまり、久保井の件からも手を引くという事で。

そう、鷹臣なら…
仁希への執着も復讐心も、忘れさせてくれるんじゃないかと。
そしてその愛に応えるためにも、手を引くべきだと考えていたのだ。

とはいえ。
倫太郎に会ったら気持ちが揺らぎそうだと思い、電話で告げたのだったが…


『…ん、そうしろよ』

「うん…
今まで本当に、あり」

『あーも辛気臭ぇ事やめろよ、メンヘラ?』

「はあっ?
あんたっ…」
いつものやり取りに胸が詰まって、言葉も詰まって。

電話でも後ろ髪を引かれてしまう。


「もうっ…
落ち着いたらその減らず口に、生姜焼き突っ込みに行ってあげる」

『バーカ、これからは旦那に作ってやれよ。
けど、なんかあったらいつでも助けてやるから…
そん時は連絡してこいよ?』

「っ、もおっ…
あんたが辛気臭くしてどうすんのよっ」
泣きながら怒ると。

『ははっ、知らねぇよ』
倫太郎は泣き笑いで送り出した。


揚羽は、最後にその無邪気な笑顔を見たかったと思いながら…

その電話を終えたのだった。