「だからこのお金は、どっちの返事にも必要だから…
ちゃんと受け取って?」

「っ、こんな事されても!
私はあんたを信用出来ない…
あれから色々考えて、やっぱり素性は晒せないって判断したのっ。
だから…
たとえ足を洗っても、事実婚って形でしか応えられないわ」

こんな持っていき方になってしまったが、それは倫太郎と話し合った手段で…
それなら鷹巨への悪影響も、最小限に防げると踏んだのだ。


だけど当然。
1千万も払ってそんな形で納得出来るはずもなく…

鷹巨は「えっ」と固まった。


やっぱり詐欺か…
それともショックなだけ?

一千万の登場で、判断に支障をきたすと。


「え、それって…
別れないって事?
足は洗ってくれるって事?
籍は入れなくても、奥さんになってくれるって事っ?」

「……まぁ、言い方を変えればね」

その瞬間。
揚羽はきつくきつく、抱き締められる。


「ありがとうっ…
俺、後悔させないから。
絶対、幸せにしてみせるからっ」

「っっ…
事実婚で、いいの?
ご両親は?周りはそれで納得するのっ?」

「納得させるよっ。
俺の人生だし、幸い二男だし、説得に長けてるやり手営業マンだし!」