というわけで道場に来た私達。


んで木刀持たされてるんだけどどういう状況?


まさかとは思うけど



「僕に一回でも勝ったら入隊させてあげる」



マジかよ…。


いや俺才能ないんだけど。


おっといけない“俺”は心の中では
使わないようにしてるのに。


まぁ、少しなら扱えるんだけどね。


父さんに少し教えてもらったことあるし。



「じゃあ、僕から行くよ」



あ、それはありがたい。


取り敢えず集中しよう。


よく見てよく聞け!!


どこから来る?


どんな攻撃が来る?


風を切る音、足音、よく聞いて。


折角耳が人よりいいんだから。


大体の予感で私は攻撃を塞ごうとする。



カンッ!!



よし、攻撃をなんとか止めた。


でも…!!


一撃が重い…!!


何この重さ…!!


これが男女の力の差かなぁ…?


悲しくなってくるね…!!


とは言いつつも何故か私は笑っていた。


よくあるでしょ?


怖いのに笑っちゃうとか。



「へぇ、よく塞いだね」



「それはどうも…」



フッと軽くなる。


今度は何をしてくるんだ?


…!!


あの構え知ってる!!


沖田総司が1番得意とした『三段突き』


突きってどうやって止めるんだよ…!!


取り敢えず剣先をよく見て私!!!


そうだ、左右によければ当たらない!


足音は一つしかならないのにいつの間にか
三回突かれているって奴だもんね!!


ドンっと足音が鳴った時私は右に避けた。


少し、かすったけど。


でもみんな驚いてるみたいだね。


避けた人初めてだったりする?


おっとっと…。


危ない危ない。


転ぶところだっ…た!?



「うあっ…!!」



横腹に激痛が走る。


バランスを崩した時にやられたのだろう。


やっぱり天才剣士には敵わないか。



「凄いね君、それで立っていられるんだ」



まぁなんとか、ですけども。


でも、いい、大丈夫。


私は人間が1番油断する瞬間を知ってる。


さぁこい沖田総司!!


風の切る音。


右斜め上から。


隙が出来てるのかわかんないけど。


ドスっ!!


私の木刀は沖田総司の首に当たった。


パタリ。と沖田さんは倒れた。



「す…」


「すげぇぇぇぇぇぇ!!」



周りから歓声が上がる。


まぁそうだよね。


この人新撰組最強だし。


まぁ、私は謎知識で勝っちゃったんだけどね。


なんか御免なさい沖田さん。



「勝者、えーっと…。」



ここは偽名の方がいいよな。


私のなんとなくだけど。


だって私今時の(?)名前だし。



「美吉野 岐山(ミヨシノキザン)です、
 俺の名前。」


「勝者、美吉野岐山!!」



よかっ…た。


やばい、横腹クソ痛い。


今すぐ倒れたいくらいに。


その時ムク、と沖田さんが起き上がった。



「凄いね、小さな隙をついてきた。
 僕の負けだよ。ようこそ、新撰組に」



そう言って手を差し出された。


えっと、握っていいのか?


しどろもどろになって手を引っ込めたり出したり
していると無理矢理手を掴まれた。



「あ、ありがとう、ございます。」



本当に勝ったんだ…。


なんというか、うん、凄かったな。


誰かと戦うなんて初めてしたかもしれない。


結構、楽しかった。


でも次は負けるよなぁ。


沖田さんに戦法バレちゃったもん。



「さて、岐山」


「なんでしょう?」


「明日から僕とずっと鍛練ね?」


「ぴぇ…」