何度見ても、この笑顔はずるい。

この笑顔にときめかない女の子なんて、いないんじゃないかなと思う……。


「わ、私も……湊先輩と帰るの、楽しいです!」


そう本音を伝えると、私を見る湊先輩の目が大きく見開かれた。


「ほんとに?」

「はいっ」


こくりと頷くと、なぜか私から顔を背ける湊先輩。

……? どうしたんだろう?

心配になって顔を覗こうとしたら、「ダメ」と阻止された。


「ちょっと待って。今俺のほう見ないで。すっげー情けない顔してると思うから」


……え?

よく見ると、湊先輩の耳が赤く染まっている。

先輩……。照れてる……?

可愛すぎる反応に、またしても胸がキュンッと音を鳴らした。


「あー……。ずっとテスト期間ならいいのに」


ようやく顔をこちらに向けてくれた湊先輩が、そう言って笑う。


「でも、テスト勉強は好きじゃないです。ふふっ」


私も、そう言って笑顔を返した。


「莉子って頭いいんでしょ?」

「え? そんなことないですよ?」

「でも学年で10番には入ってるって、富里が言ってたけど」


さ、紗奈ちゃん、そんなこと言ったの……?