なんの用だ……?と思いながら京壱を見ると、何やらアルバムのようなものを持っていた。


「ちょっと荷物取りに来てたんだ」


あっそ……。

とくに興味もないので、黙ってキッチンに向かう。


「部活?」

「うん」

「お疲れ様」


他愛もない会話をしながら、冷蔵庫のお茶を取り出し喉を潤す。


「最近母さんどう?」

「どうって……。別に普通。男のとこに転がり込んでんじゃない?」


基本的に、この家に母親が帰ってくることはない。

母親の浮気で両親は離婚し、今も相変わらず。

別に、どうでもいいけど。

それは紛れもない本心で、寂しいと思ったことはない。


「心配なら連絡してやれよ」

「え? 全然心配じゃないけど?」


京壱も同じで、本当にどうでもよさそうにそう言う。

じゃあ聞くなよと思いつつ、お茶の入ったペットボトルを冷蔵庫に戻す。


「……なんか兄さん、雰囲気変わった?」

「え?」


唐突にそう聞かれ、思わず言葉に詰まった。

雰囲気……?


「やわらかくなったっていうか……何? 恋でもしてるの?」


図星を突かれ、ビクッとあからさまに反応してしまう。