1人残された俺は、さっきの莉子の言葉を思い出して、その場にしゃがみ込む。


「……今のは反則だろ……」


……ヤバい、嬉しすぎる。

つーか今、絶対顔にやけてるし……。あー、なんでこんな可愛いんだろ……。

かっこいいとか……。しかも、いつもって……。マジかよ……。

嬉しすぎて、死にそうだった。

さっきの莉子の発言が頭から離れないまま、ぼーっとしながら家に帰る。

いつもは閉まっているはずの家の門扉が開いていたのに、とくに気にもとめず家の中に入った。

あー……。可愛かった、マジで……。


「ただいまくらい言いなよ」


余韻に浸っていると、突然背後から投げかけられた声。

慌てて振り返ると、そこには久しぶりに見る弟の姿があった。


「……京壱」


ビビった……。

やわらかい笑みを浮かべながら、「おかえり」と言ってきたのは、1つ年下の弟、京壱。


「なんでいんの?」


俺たちは両親が離婚し、それぞれ父親、母親に引き取られた。

親父に引き取られた京壱とはもちろん一緒に住んでいないし、最後に会ったのは、多分半年前くらいだ。

こいつが家に来るなんて珍しい。