いつもは朝日の前でデレデレな富里だが、興奮しているせいか恥じらいもなくそう言いきった。

それが予想外だったらしく、朝日が一瞬動揺したのがわかる。


「……ありがとう」

こいつ……。照れてんの?

朝日が照れている姿がレアすぎて、飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。

莉子はというと……。楽しそうにニコニコと俺たちを見ている。

その姿が、言わずもがな可愛い。


「でも……。サッカーの公式試合って初めて見たんですけど、すごく楽しかったです……!」


そう言って笑う莉子の周りに、花が舞う幻覚すら見えた。

よかった、楽しんでくれたみたいで。


「ルールわかった? 事前に説明しとけばよかったな」

「大丈夫です。今日のために勉強しました」


え?

サッカーはわからないと、この前言っていたのに、今日のためにわざわざ勉強してくれたのか?

……嬉しい。

そんな優しいところも好きだと、思わずにはいられなかった。

 
「じゃあ、また明日」


昼飯を食べ終えて、解散する。

家の方向が違うため、途中で俺と莉子、朝日と富里の2人ずつに別れた。