朝日は、顔にいつもの笑顔を浮かべたまま、薄い唇を開いた。


「今は、ね。でも俺が狙ってるんで、手出し禁止っすよ。まあ紗奈ちゃんのこと本気で気に入っちゃったなら、俺も本気で相手しますけど」


その声色はいつものものとは違って、低く、殺意むき出しの声だった。

……こいつやっぱり、そうだったのか。

富里が、朝日をかっこいいと言ってはしゃいでいるのは知っていたが、朝日も富里を恋愛対象として見ていたとは知らなかった。

つーか、いつからなんだろう。

そんな呑気なことを考えている俺とは反対に、先輩たちが顔を真っ青にしている。


「こ、こえぇ……」

「2年コンビ怖すぎかよ」


うっせ。

心の中でそう返事をし、隣の朝日に声をかける。


「お前がそうだったとは知らなかった」


俺の言葉に、朝日はニヤリと笑った。


「まぁね。湊には感謝してるよ。キューピッドだから」


キューピッドってことは……屋上で昼飯を食べるようになってからってことか。

つーか……。


「なら、告ればいいだろ。向こうだってお前のこと、あからさまに好きじゃん」


俺とは違って、脈ありなのに。