その顔はいつもと違って、少しだけイラついているのがわかる。

……ん?


「つーか、紗奈ちゃんさっきから思ってたけど、寒くない? はい、これ」


朝日はそう言って、予備のジャージを富里の肩に掛けた。


「これ着てて。寒さと虫除け対策っ……てね」

「虫除け……?」


……こいつ、もしかして……。

富里は不思議そうな顔をしているが、俺はなんとなく、この関係図を察してしまった。


「ねぇねぇ、湊のどこがいいの? 超無愛想じゃない?」


そんなことを考えながら、少し目を離した隙に、後ろから来た先輩に声をかけられていた莉子。

チッ……どいつもこいつも……。

俺が止めに入るより先に、莉子が困ったような表情をしながら口を開いた。


「えっと……。と、とても……優しいです……」


……っ、え?


「フゥ~!!」


茶化すような声が周辺にあがるが、俺は莉子の発言に、言葉を失っていた。

そんなふうに……思ってくれていたのか?


「なんだよ! お前彼女にはデレデレタイプかよ」

「可愛いとこあんじゃん!!」