「そうですか?」

「弁当ありがとう。全部美味しかった」


あっという間に空になってしまった弁当箱を見て、残念に思った。

十分お腹は満たされたけど、もっとずっと食べていたかった。


「全部食べてくれて嬉しいです」

「あのさ」

「……?」

「また……作ってくれる?」


少しわがまますぎるだろうかとも思ったが、どうしてもこれを最後にしたくなかった。

恐る恐る聞いた俺に、莉子が満面の笑みを浮かべる。


「はいっ。もちろんです……!」


……よかった……。


「ありがとう」


無意識に、頭を撫でようと手を伸ばした。

そっと触れようとしたとき、


「戻ったぞー!!……って、お前ら!! 何しれっと彼女連れてきてんだよ!!」


……チッ。

うるさい人たちが帰ってきて、伸ばした手を引っ込める。

ぞろぞろと戻ってきた、3年の先輩たち。


「……って、もしかして小森莉子ちゃん……!?」

「うわマジ! 本物じゃん!!」

「湊お前……噂はマジだったのか!!」


あー……最悪。

俺たちを見るなり騒ぎだした先輩たちに、ため息が漏れる……。