莉子を怖がらせたら本末転倒だ。
とりあえず、このうざったい視線はできるだけ俺が遮断しよう。
ていうか……。注目の的になるのも無理はない。
ただでさえ可愛いのに、今日は私服に加えて、うっすら化粧もしている。
髪も可愛らしく括り、いつも以上の可愛さだった。
俺の、唯一の人。
好きで好きでたまらない、たった1人の女。
こんなふうに試合を見に来てもらえる関係になれたことが、正直今でも夢みたいだった。
「莉子、ここで見てて」
「はいっ……」
俺たちのチームが待機する応援席へとついて、莉子を俺の席の隣に座らせる。
他の部員はスタジアムの売店に行ったり、休憩に入っているようで、幸い今は俺たちの4人だけ。
前の席に座った朝日と、その隣に座った富里が楽しそうに話していて、俺も莉子とゆっくりできる時間を噛みしめようと思い椅子に座った。
「今日の試合、1時までには終わるから」
初戦とそれを勝ちあがったら2回戦目、負けることはないだろうから、今日は合計2試合ある。
帰りに、4人で遅めの昼飯を食べに行く予定。
試合まで、あと50分くらいか……。
「莉子、はい」