【side 湊】

正直、莉子が試合を見にくることに、賛成ではなかった。

来てくれるのはもちろん嬉しい。

でも……。

嫌だったんだ。


「なぁ見ろよ、あの子」

「ヤバくない? 可愛すぎだろ!」

「なんかのモデル? 今年の応援マネージャー候補?」


俺たちが応援席へ向かう最中。四方八方から感じる視線に、苛立ちは増すばかりだった。

やっぱり……莉子が来たら、必然的に男の視線が集まる。

これが嫌だったのに……他の男に、莉子を見られたくなかった。

なんて……。まだ彼女でもないのに、どんなわがままな嫉妬だよ。


「……湊先輩? どうかしたんですか?」

「え?」

「なんだか……。怖い顔してます……!」


俺のほうを見ながら、悲しそうにそう言う莉子。

俺は慌てて、莉子にしか見せない笑顔を浮かべた。


「ごめん、考え事してた。なんでもないから大丈夫」