「湊先輩が女と歩いてる……!」


こそこそと何か言われている声が聞こえて、思わず肩を縮こめた。
多分、有名な先輩の隣に私なんかがいるから、何か言われているんだろう……。

どこからともなく聞こえる悲鳴に、湊先輩の人気を痛感する。

先輩はこれだけ注目されて、気にならないのかな……?

ちらりと先輩のほうを見るけど、まったく気にしていない様子だった。

噂されるのが日常茶飯事だから、もはやなんとも思わないのかな?

そんなことを思っていると、パッと先輩がこちらを見た。


「今日の放課後ってあいてる? 今日部活ないから、一緒に帰りたいんだけど」

「え?」


放課後……?

突然のお誘いに、少しだけ悩む。

今日は……何もなかったよね?


「はい……今日なら、あいてます……」


保健委員の仕事もないし……うん、大丈夫。

って、一緒に帰りたいってそれは……もしかして、ふ、2人でってこと……!?


「それじゃあ終わったら教室まで迎えに行くね」

「は、はい……」

「俺、教室こっちだから、バイバイ」


とっさに頷いた私に満足げな表情を残して、先輩は行ってしまった。