「先輩声デカイです。ていうか、うるさいです。俺行かないって言いましたよね?」


部活の先輩かな……?

会話の内容から、そう察する。

はっきりと会話の内容は聞こえなくなったけど、それでも何か怒っているような声が所々漏れていた。


「今日は大事な用事があるんで。お疲れ様です」


それだけ言って、ピッと通話を切ってしまった湊先輩。

そのまま電源を落とし、スマホをポケットにしまった。

だ、大丈夫なのかな……?


「あの……よかったんですか? カラオケって……」


部活の先輩からの誘いって、断ったらダメなんじゃないのかな……。

体育会系って、上下関係が厳しいって聞くし……。


「先輩のお誘いだったら、行ったほうがいいんじゃないですか……? 私、1人で帰――」

「いや」


え?


「俺は莉子と帰りたい」


きっぱりとそう言われ、言葉を呑む。


「莉子との時間邪魔されんのは、先輩でも許さない。俺にとっては莉子が一番大事」


子供みたいに口をヘの字に曲げた湊先輩が可愛くて、何も言えなくなった。


「今日も莉子と一緒に帰るために、部活頑張ったし」