私今日、湊先輩にドキドキさせられっぱなしだ……。


「あら? 莉子ちゃんお迎えなんて珍しいわね」


奥にいた先生が、湊先輩の姿を見て一瞬目を見開いた。


「ふふっ、やだもー、青春ね!」

「せ、先生……!」

「ふふっ、気をつけて帰るのよっ」

「は、はい……」


からかわれたことで頰が熱くなり、湊先輩を見ることができない。


「帰ろ」


そっと手を握られ、こくりと頷いた。


「はいっ……!」

 「さようなら」と挨拶をして保健室を出て、そのまま2人で学校をあとにした。

正門を出たとき、ちょうど湊先輩のスマホから着信を知らせる音が鳴った。

湊先輩は、画面を見て面倒くさそうにため息をつく。


「……はぁ、ちょっとごめん。電話出ていい?」

「はいっ」


そんな嫌そうな顔して、誰からなんだろう?

『おい瀬名!! お前今どこだよ!! 今日レギュラーでカラオケ行くっつったろ!!』

音量を大きくしていたのか、はたまた電話の相手の声が大きいのか、私にまで聞こえてきたその声。

湊先輩は慌てて音量を下げ、鬱陶しそうな表情をしながらスマホを耳に当てた。