ダブルブッキングのような形になってしまい、そう謝って頭を下げると、紗奈ちゃんは「いいのよ、いいのよ!」と微笑み、逃げるように走っていった。


「ごめん、約束してた?」


申しわけなさにそうに眉の端を下げる先輩に、慌てて首を振る。

そんな……悪いのは私のほうだ。

だって……本当に来てくれると、思わなかった……。


「あの、私のほうこそすみません! 冗談だと思って……」

「冗談? 何が?」

「先輩が……その……放課後誘ってくれたのが……」

「どうして?」


不思議そうな様子の先輩は、目を開いてじっと私のほうを見てくる。


「えっと……」

「……待って、とりあえず帰ろ。ここ人多い」


え?

先輩の言葉に、そっと視線を周りに向ける。

……っ!! いつの間にギャラリーが……っ。


「ねぇ、あれって……」

「瀬名先輩と小森莉子が付き合い始めたって……本当だったの……!?」

「俺たちの莉子ちゃんがぁ……!」


見渡すと、私と先輩を取り囲むように、人だかりができていた。

なんだか恥ずかしくて、スッと視線を下へと向ける。