私とは違って、美人で、大人っぽくて、湊先輩に釣り合うような人だった。

お似合いだって……。思っちゃったっ……。


「心臓が、潰れちゃいそぅ……」


ズキズキと痛んで仕方がない胸を押さえ、声を押し殺して泣いた。

私よりもあの女の人を優先したっていうことは……。そういうことだよね。

私はもう、いらないってことで……。

もう湊先輩に、近づかない方がいい。

きっとそばにいたら、もっともっと好きになっちゃう。

今ならまだ、諦められる……。

涙をゴシゴシと拭ったとき、ポケットの中のスマホが震えた。

紗奈ちゃんかな……?と思って画面を開くと、そこには今一番見たくない人の名前が表示されていた。


【莉子、今日はほんとにごめん。今週の日曜日ってあいてる?】


……っ。

その湊先輩のメッセージに返事をしないまま、スマホの画面を落とした。

お願いだから……。これ以上、私に構わないで。

人を好きになることが、こんなに苦しいなんて、思ってもいなかった。