紗奈ちゃんに迷惑をかける前に、一刻も早くここから逃げ出したかった。


「ちょっと莉子、ほんとに誤解だよ、きっと。なんなら直接先輩に聞いてみようよ?」

「ううん……。ごめん、今日見たことは、瀬名先輩には言わないでほしい」


真実を確かめるのが怖い……。


「ごめんね……ま、また明日!」

「ちょっ……莉子!!」


引き止める紗奈ちゃんの声も聞かず、私は逃げるように走った。

あの湊先輩が、女の人と腕を組んで歩いてた……。

一直線に家へと帰って、自分の部屋に入る。


「こんなのって、あんまりだ……」


ドアにもたれかかるように、ズルズルとその場に座り込んだ。

私、今日告白しようと思っていたのに。

本当は、緊張で昨日もよく眠れなかった。

湊先輩にちゃんと伝わるように、告白の言葉もたくさん考えて、必死に悩んで、それなのに……。

伝えることすらできずに、失恋しちゃったの?


「湊先輩……」


無意識に、その名を口にしていた。

さっきの光景を思い出して、我慢していた涙が溢れ出す。

今頃湊先輩は、あの女の人といるんだ。

とっても綺麗な人だった。