彼女は湊先輩の腕に自分の腕を絡め、楽しそうに話している。

湊先輩は無表情だけど、決してその手を離そうとはしなかった。

ズキンッ。

心臓が、今まで感じたことのないような痛みに襲われる。

湊先輩、今日は用事があるって言っていたけど……。

用事って、他の女の人と、遊ぶことだったの……?


「えっと……莉子? なんかあれじゃない? 逆ナンでもされてただけだって……」


私を慰めようとしてくれているのか、紗奈ちゃんがそう言ってくれるけど、あきらかにそうではないとわかる。

だって、湊先輩の女性嫌いは私も十分知っていたし、普通の女の人が触ろうものなら容赦なく振り払うはずだ。

だからきっと……。あれは湊先輩も同意の上で、腕を組んでいるんだろう。


「……あんまり気にする必要ないよ……。ほ、ほら、瀬名先輩女嫌いだし! なんか理由があるんだよ!」


紗奈ちゃんの慰めも、もう私の耳には届かなかった。

ダメだ……。


「……ごめん紗奈ちゃん、私……帰る」


……泣き、そう。

このままここにいたら、情けなく泣いてしまう。