そっと、先輩が手を伸ばしてきて、次の瞬間には先輩の大きな身体にすっぽりと包まれていた。

どうしよう……心臓が、爆発しそうっ……。


「莉子がいなくなった……って聞いて、冗談じゃなく心臓止まるかと思った」


……湊先輩?

苦しそうな声に、私まで胸がしめつけられる。


「無事でよかった……」


ぎゅうっと、抱きしめる腕に力が込められた。

それが心地よくて、私も同じように抱きしめ返す。

あぁ……。好き、だなぁ……。


「あの……湊先輩」

「ん?」


今すぐ、好きって言いたい……。

一瞬そんなことを思ったけれど、ハッと我に返る。

今じゃない……。

今言ったら、絆されたみたいだから、ちゃんとお互い普通のときに……冷静なときに伝えなきゃ。

告白する言葉も、ちゃんと考えたい。

テストが終わった日に、ちゃんと……。


「……いえ、なんでもありません。それより、そろそろ教室戻りませんか? 授業が……」


はぐらかすようにそう言うと、時計を見て、湊先輩が抱きしめる腕を解いた。

寂しいと思ってしまった自分に、恥ずかしくなる。


「それじゃあ教室まで送ってく。行こ」