「う、うん……」

「でもいいじゃない! あの人勉強できるし、言わずもがな顔は国宝級! 公立じゃ強豪なうちのサッカー部で、2年にしてエース! 運動神経も文句なし! 不安要素なんてないでしょ! もう付き合っちゃいなさいよ!」

「そ、そんな……簡単に言わないでよ。私、先輩のこと何も知らないもん……」


ニヤリと口角を上げる紗奈ちゃんに、私は首を左右にぶんぶんと振った。

紗奈ちゃんってば、他人事だと思って……!


「勿体無いわよ。あれほどのハイスペック男を逃しちゃ!!」


確かに、紗奈ちゃんが言っていることもわかる。

あんな少女漫画のヒーローみたいな、何もかも持って生まれてきたような人、きっとこの先私の前には現れないかもしれない。

でも……それとこれとは別っていうか……。

恋人って、好き同士の2人がなるものでしょ……?

好きでもないのに付き合うなんて、先輩にも失礼だと思うし……。


「ま、あたしはクール系はタイプじゃないけどね? どっちかっていうと朝日先輩のほうが断然好みだわ……!」


考え込む私を尻目に、紗奈ちゃんがそんなことを言った。


「朝日先輩?」