宇佐美くんは家の前まで送ってくれた。
繋いでいた手をそっとはなし、彼は思い出したように言うのだった。



「俺、別に女の子と遊ぶのが好きってわけじゃないんですよ」

「…え、なんですか急に」

「寂しがりやって言ったじゃないですか。今はせんぱいが仲良くしてくれてるから全然寂しくないの。せんぱい、超ピュアだから面白いし」

「…バカにしてるでしょ」

「ほめてます。せんぱいがこれからも俺にかまってくれるなら、他の子要らないかも」






そう言って口角を上げた宇佐美くんは、「じゃあまた、」と言って私の頭を優しくなでた。

踵を返す彼の背中を見つめながら、宇佐美くんの温もりが残る手をぎゅっと握る。





…『せんぱいが構ってくれるなら他の子要らないかも』って、クズの発言じゃん。



なんてそんなことを思いながらも緩んでしまう頬。


今の宇佐美くんは、きっと私しか知らない宇佐美くんだ。


あの遊び人の彼が更生しようしているのなら喜ばしい。
私と宇佐美くんは、ちゃんと“仲の良い先輩後輩”になれているのかもしれない。






ただひとつ。今日、彼に対して感じた寂しさともやもやだけは、最後までずっと残ったままだった。