宇佐美くんの口封じ










「せんぱい、…あんなのフィクションだから大丈夫ですよ?」

「…無理…当分夜は眠れない…」

「あ、せんぱい後ろに、」

「ひぃっ!やだぁ!」

「冗談だって。ビビりすぎ」




約2時間の地獄から帰還した私は、いつもの私の意地には逆らって宇佐美くんの手を自ら強く握ることでしか、生きた心地を味わうことができなかった。



宇佐美くんの見たい映画。
それは、私がこの世で1番苦手なホラー映画だった。



知っていたら絶対に拒否したのに。

チケットを買う時に、「人多いからここで待っててください」というから、仕方なく私はベンチに座って待っていたのだ。



異変に気付いたのは、アナウンスが流れて劇場内に案内されてからだった。



予告映像が、どれもこれもホラー映画なのだ。


いつもなら、恋愛映画だとか人気アニメだとかの予告も流れるのに、今日に限っては海外のホラー映画の宣伝ばかり。

時々来るホラー以外の映像も、海外のアクション映画だったり、事件を暴いていくサスペンスだったり。





まさかな…と思い、隣でメロンソーダを飲んでいる宇佐美くんに確認したところ、


「あ。怖いの苦手ですか?はは、がんばってください」

と言われたのだった。