「…え、えっと、この手は…」
「お詫びがしたいんでしょ。だったらお金よりこっちの方が俺は良い」
「…なに、それ…」
「あ。せんぱい照れてる?ほんと、そういうとこ可愛いですよね」
握られた右手を弱弱しく振りほどこうとするも、「だーめ」なんて言って宇佐美くんがより一層強く握ってくるので解けず。
突然繋がれた手と、不意打ちの「可愛い」の言葉に、体温が一気に上昇する。
何食わぬ顔で歩き出す宇佐美くんが、俯く私にフッと息を吐くように笑った音がした。
…平気でこういうことできちゃうんだ、宇佐美くんは。
経験値は、彼と私とでは天と地以上に差がある。
私はこんなにもドキドキしてしまうのに、宇佐美くんにとっては私はただの“仲良しなせんぱい”で、宇佐美くんの都合で簡単にキスできちゃうような、そんなレベルの女。
私は宇佐美くんの遊び相手ではないけれど、…単純に仲が良いとは言えない。
ドキドキする気持ちと、その裏側に隠れたもやもやが交差する。
宇佐美くんは、私のことをどう思っているのだろう。
繋がれた右手の温度を感じながら、ふとそんなことを考えた。



