宇佐美くんの口封じ







伝票を持ってレジへ行くと宇佐美くんが「あとでもらいます」といって私の分もまとめてはらってくれた。

確かに、私たちの後ろにもお会計を待っている人がいたから、まとめて払ったほうが店員さんも助かるだろう。





「宇佐美くんごめん、お会計ありがとう」


遅刻した分のお詫びもかねて私が全部出そうと考えていた私は、お店を出てすぐ2人分のお金を宇佐美くんに渡そうとした。



「あ、要らないです」

「え、だめだよ!遅刻しちゃったし、そのつもりで食べに来たんだもん!」



必死に訴えるも、宇佐美くんは半分ですら受け取ろうとしない。


私の方が先輩だし、彼女でもないわけだし、宇佐美くんにごちそうになる権利は私にはないはずなのに。

申し訳なくて、だけどどうしていいかわからずうつむくと、宇佐美くんは小さくため息をついて言ったのだった。





「俺がいいって言ってるからいいんです。黙って奢られてやろうくらいの気持ちがないと、せんぱいいつか悪い男に利用されちゃいますよ?」

「…でも」

「あー、もう。でもでもうるさいな」







そう言ってくしゃくしゃと後ろ髪を掻くと、





「お詫びなら、こっちのほうがいいです」





宇佐美くんは少しだけ口角を上げて、───私の手を握った。