宇佐美くんの口封じ







彼のもとに駆け寄ってすぐ頭を下げて謝る。

「本当に怒ってないから」と付け足す宇佐美くんの声につられて恐る恐る顔をあげると、宇佐美くんはにーっと怪しげに口元を緩ませた。



…ああ、嫌な予感。
宇佐美くんのその顔は絶対何か企んでいる顔だ。




「まあでも、」

「…でも?」

「今日のせんぱいに拒否権はないと思った方いいですね」

「うっ…」





やっぱり手始めに荷物持ちとかだろうか。

いや、そのくらいならまだ全然いいけれど、宇佐美くんの言う拒否権が使えない事柄がどういうものか全く想像ができなかった。





「それよりせんぱい、お腹すいてますか?」

「えっと…起きてから何も食べてなくて…」

「まあ寝坊してますもんねー。じゃあ映画の前にご飯食べに行きましょうか」




今日は彼の言うことは絶対だ。
遅刻した私に拒否権は存在しない。




そう言った彼に頷いて、宇佐美くんの一歩後ろを歩く。


すると。





「せんぱい、後ろじゃなくて隣歩いて」