宇佐美くんの口封じ






宇佐美くんの連絡先は、ついこの間半ば強制的に交換させられた。




「俺に会いたくなったらいつでも電話かけてきていいですよ」




そう言って笑った宇佐美くんの顔が浮かぶ。

…何も言わず笑ってるだけなら無害なんだけどなぁ。





スマホを開き、『宇佐美 依里』という名前を探す。トーク画面をひらき、震える手で通話ボタンを押した。

2コールほどで、「せんぱい?」という声が耳に届いた。





「う、宇佐美くん…」

『はい。どうかしましたか?』

「あの…寝坊してしまいまして…ごめんなさい…」

『…あー、なるほど。全然いいですよ。全然』

「ご、ごめん本当に…すぐ準備する…13時半には着くと思うから、その…」

『はは、全然怒ってないですって。じゃあ13時半に。待ってますね』

『う、』







ツー、ツー、という機械音が響く。



返事をする前に切られた電話。
わざとらしく強調された“全然”という言葉。
「はは」という空笑い。




…めちゃくちゃ怒ってるじゃないですか絶対。