宇佐美くんの口封じ






「…土曜?…多分空いてるけど…」

「じゃあ決まりですね。俺、見たい映画があるから一緒に行きましょ」

「…は、」



「はぁ?」と声を洩らすと同時に、お昼休み終了の予鈴が鳴った。宇佐美くんはベンチから立つと、足早に出口に向かって歩き出す。





「じゃあせんぱい。また放課後、部活で」

「え、ちょっ、良いっていってないんだけど…!」

「早く戻らないと授業遅れますよ」

「はぁ!?」




私の声は、バタン…と閉まったドアによって遮られてしまった。





「…勝手すぎるでしょ…」




ひとり取り残された私のそんな嘆きは、屋上の澄んだ空気の中に溶けていった。