ちゅ、とキスを落とされたのは唇……ではなく、口元を抑えていた手の甲だった。
宇佐美くんはそっと私の手首を離すと私から離れ、何事も無かったかのように残っていたカフェオレをチューっと吸っている。
「…う、宇佐美くん」
「なんですか?」
「いや…、なんでもないですが…なんと言いますか、」
キス、されるかと思ったのに。
半ば諦めて抵抗すらしなかった自分がいたことを思い出し、かぁっと顔が熱を帯びる。
「仲良くしよーね、雨宮せんぱい」
「……、」
にっと笑う宇佐美くん。
反応を見るからに、確信犯としか思えなかった。
…やっぱりからかわれてるし、すごい舐められてる気がする。
「せんぱい、次の土曜空いてませんか?」
顔の熱を覚ますようにパタパタと手で仰いでいると、すっかり通常運転に戻った宇佐美くんが聞いてきた。



