宇佐美くんの口封じ



もちろん恋をしたいとも思うし、彼氏がいたらどうなるのかなとか考えることもなくはない。


けれど、それもまた強い願望では無かった。
私にとって、恋愛は生活の必需品ではない。


友達と遊んだりライブの練習をしたりする方が、今の私にとってはよっぽど幸せな事だと思う。




「せんぱいって俺が思ってたよりずっとピュアなんですね」




質問に答えない私に、肯定の意味だと思ったのか宇佐美くんはそんなことを言ってきた。






「…うるさいな」

「大人しそうな見た目は本物ってことですね」

「…バカにしないでよ」

「してませんって。ピュアすぎて可愛いとは思ってますけど」




宇佐美くんと目を合わせないように、膝の上に広がるお弁当箱をカチャカチャと片付ける。



…ピュアすぎて可愛いってなんだよ。


バカにしてるとしか思えない。
たしかに元から宇佐美くんは私の事バカにしていたし、なめられている実感もあったけれど。