宇佐美くんの口封じ






「雨宮せんぱーい」

「…げっ」




「噂をすればだよ」と、隣でリコがにやにやしている。声のする方に目を向けると、私の教室の入り口から手を振る宇佐美くんの姿があった。





「お昼のお誘いじゃない?」

「ひぇ…なんで…」

「なんでって、あんたのこと気に入ってるからでしょ」





今はお昼休み。

私はリコとお昼を食べようとしていたのに、「面白いから行ってきな」と完全に私の様子を見て楽しんでいるリコに背中を押され、手にはちゃっかりお弁当が入ったトートバックを持たされる。






2年生と3年生の教室は階が違う。


上履きには、3年生が青、2年生が黄色、1年生は赤のラインが入っているので、
黄色のラインが入った上履きを履いている彼───しかもよりによって宇佐美くんがこの階にいる時点で目立って仕方がない。


それでいて、そんな目立つ彼に呼ばれているのはこの平凡な私だ。