「買わないんですか?」

「別に好きじゃないもんあの俳優。たまたま目に入っただけだよ」

「ふーん。じゃあお目当ては?」

「…別に宇佐美くんに関係ない」






本当は少女漫画を買いに来たけれど、宇佐美くんがいる所で少女漫画を買うのは少し気が引けるというかなんというか…。

「せんぱいってこーいうの好きなんだ」とか小馬鹿にされそうで恥ずかしかった。





ていうか、どうして宇佐美くんが駅にいるんだろう。


宇佐美くんも電車通学だったとか?
勝手に自転車通学だと思ってた。勝手に。





「ね、せんぱいってさー」

「…なんですか」

「玲と付き合ってるんですか?」





早歩きしていた足の速度が落ちる。







「……何を言っていらっしゃいますか?」

「いやさっきまで一緒に居たでしょ。俺見ましたもん」

「玲はただのバンドメンバーだよ。そういうんじゃない」

「…ふーん?」