急に耳元でそんな声が聞こえ、私は思わず写真集を持っていた手を離してしまった。
「え、危な、」と言う声と共に、反射的に後ろから伸びてきた手が写真集を掴む。
バッと振り向くと、そこには何故か宇佐美くんの姿があった。
「せんぱい毎回驚きすぎなんだって。「ひぃ!」って声も毎回同じだし。ブレないですね」
「っ、宇佐美くんが急に声掛けてくるからじゃない!」
「えー。だって"仲良しの先輩"見かけたら声掛けますよ、普通」
わざとらしく"仲良し"を強調する宇佐美くん。
それはあなたが勝手に言ってるだけだからね!
私は仕方なく許可したんだからね!
しかもつい数時間前の話だしね!
ていうかいつもいつもなんで足音しないのかなこの人!
宇佐美くんの手によって落下を阻止された写真集を奪い取り、元あった位置に戻す。
くるりと向きを回転させ、私は出口に向かって早歩きをする。



